今日はまったくの平日、午後7時すぎ。いつもながらの人ゴミの中、いけふくろうの石像の前で張り込む山口さん。待つことおよそ1時間が経過。ふとそこに現れた女にターゲットを絞り込んだ。まずは接近、観察だ。
人ひとり分間隔をあけてこのムスメの斜め後ろに立つ。歳は少しイッてそうだが大人しめの安倍なつみ(モーニング娘にまだ在籍中)という感じ。この様子は学生だろうか、まさか主婦じゃあるまいな?さっきからキョロキョロと辺りを見回している。それに腕時計と携帯とを交互に気にしているようだ。
彼氏との待ち合わせにしては、あまりウキウキした様子でもない。あきらかに不自然な様子の彼女。まず間違いなくテレクラの待ち合わせだろう。もしオレだったら絶対に行かないが、山口さんはここで勝負に出やがった。
女の肩をポンツと叩く。
「えっと、電話の子?」
「あ、はい、そうですけど……××さん?ですか?」
「よかったあ、本当に来てくれたんだね。いやあスゴい人の多さだねじゃあちょっとココじゃなんだから移動しようか。とりあえず居酒屋でも構わない?時間大丈夫?平気だよね?」
「はあ……」
なんと山口さんは、たったこれだけの会話でその女を連れ出すことに成功したのだ。もちろんいつもこんなに上手くいくわけではないらしい。だが逆にその場のシチュエーションにビタりとハマれば、これほど自然なお持ち帰り風景もないのだろう。
ちなみに山口さんはこの手のきっかけづくりの会話法を数十パターン持っているらしい。
「どんなパターン?」と尋ねるのは野暮。よーく文脈を把握して欲しい。相手の女はこちらのことを「よく」知らないのだ。
まあ、電話での会話のなかで、テメーの住所・氏名・年齢・職業・果てはチ○ポのサイズまで語るバカはいる。でもそれは例外だ。おおよその野郎どもは名前と年齢くらいしか述べずに、適当な口説き文句を並べ立てる。
そこを巧妙に突くのだ。自分の「素性」を証さない、つまり、名前も名乗らず「さっきしたはずの」会話になんか触れもせずに徹底的に身の内を隠したままで女に接近するわけだ。
「えっと、電話の子?」でも「こんばんは、さっきはどうも」
「でも嬉しいなあ。ホントにきてくれたんだ」でも、とにかくなんでもよい。自分の素性を隠しつつ、とりあえず話しかければよいのだ。
もしその女が「テレクラ待ち」じゃなかったら、まあハズレだと割り切れ。っていうか見る目がなかったと自分を責めることだな。
とにかくそう、この時点であらかた勝負はついてしまうわけだ。
さらに山口さんの話は続く。
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